一条工務店が全館床暖房にしなければならなかった理由


一条工務店は一般的には無名な企業です。しかし、家作りを考えると多くの方が目にする企業名かもしれません。その一条工務店の代名詞とも言えるのが「全館床暖房」と言えます。

全館床暖房というと豪華装備に思えますが、実はそうではありません。すべての顧客満足を実現するために必須の装備であることが見えてきます。

その答えを少し紐解いていきましょう。

セールスのためなのか?

一条工務店では全館床暖房をセールストークに販売を伸ばしています。高気密高断熱や太陽光パネル、タイル外壁等魅力はほかにもありますが、やはり全館床暖房が一番の売りになるのではないでしょうか。

セールスのためというのは有力な理由の一つです。

全館空調を他のハウスメーカーが導入し始めてきているのも、一条工務店の全館床暖房の影響が大きいでしょう。

一方で、セールスのため以外の理由も考えてみましょう。

セールス以外の理由はあるのか?

全館空調は、他社もはじめている通り、快適で顧客受けが良い装備です。一方で難題も抱えています。それは空調という名前の通り、「空気を調節する」ことです。

全館空調の難題は空気の制御

空気は温まりやすく、冷めやすい。対流を起こし制御しにくい特性があります。暖かい空気はすぐに上に上がり、冷たい空気は下に下がります。その場にとどまろうとしません。温度差を見つけると、すぐに移動しようとします。

その移動のことをコールドドラフトと言ったりしますし、空気の移動により「リビング階段は寒い」と言った状況を産み出します。

空気の制御は実は非常に難しいのです。その難しい空気の制御を、「設計から考え、実際の家に作り込み、成功させること」は至難の業となります。

結果、経験を積んだ能力の高い設計者でなければ成功しません。経験を積んだ能力の高い設計者の例で言えば、松尾設計室の松尾和也さんでしょう。

しかし、そのような優秀な設計者は多く存在していません。言い換えると、普通の設計者がやるとほぼ失敗するということになります。

そこで一条工務店が持ちだしたのが「水」です。

空気以上に管理のしやすい「水」

一条工務店が持ちだした「水」???

はい、「水」です。一条工務店の全館床暖房の管の中には水が流れています。空気は制御が難しいですが、水を使うことにより制御を簡単にしたということです。水であれば、管を通るだけなため空気のように自由に移動が出来ません。エリア分けされている部分の温度を的確に制御が可能になります。

暖かい空気が上に上がる心配をする必要はありませんし、リビング階段から冷気が下りてくる心配もする必要はありません。
※ただし、一定レベルの断熱気密性能が担保されていなければなりません。

「水」を選んだ一条工務店の経営陣は…

一条工務店経営陣は、

「 年間一万棟以上の建築を行いながら、空気を「全棟で確実に制御できる」レベルの設計士を育成することは困難」

と判断したのです。これは、非常に合理的な判断と言えます。

「コロンブスの卵」です。

「水」を使った設備で全館の床を暖めることにより設計士のスキルに依存せず、全棟で快適な環境を作ることができるのです。これは、上に述べたセールス以上の顧客価値を高める効果を発揮します。

「設計士の育成をせず、顧客満足を実現する」

まさに「コロンブスの卵」的な発想の転換です。

全館床暖と「水」の親和性

空気は制御が非常に難しいと書きました。

「水」を使い水の通り道である管を床下に置き、それが全館床暖房という形になったということです。

空気では難しかった熱の効率的な分配を「水」を使い各部屋に分配すると決めたのです。この判断は、「人的育成(=設計士の育成)」と「設備投資(=全館床暖房導入のための設備)」という資金の分配を天秤にかけ、必要とする結果(=顧客の快適性実現)を実現するため、いかにすべきかを「経営判断として」行ったものです。

「NO」を「YES」に変える「経営判断」

顧客は千差万別、立地も千差万別、当然間取りも千差万別の環境で、年間一万棟以上のすべてで顧客を満足させる空調計画が作れるかと言えば答えは「NO」です。

「NO」を「YES」に変えるために、経営判断したのが、全館床暖房の導入ということです。

全館床暖房は、すべての顧客の生活を快適にするためには避けて通れなかった経営判断で、建築士の力量に左右されず、「すべての顧客満足」を実現するためには必須だったのです。

一条工務店は無名企業で、野暮ったい名前、しかし、経営陣は非常に優秀

一条工務店は多くの国民は名前を知らないでしょう。

「家を建てる人なら聞いたことがある」程度かもしれません。しかし、経営判断はいくつかの失敗もあるものの、非常に優れています。身近な企業ではありませんが、企業を経営判断から観察すると異なる視点が見えてきて、消費者にとっても判断の材料になる可能性もあるかもしれません。


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